セミオーダーという「甘い罠」で溶けた時間と利益
「予算1万で何かレサーアイテムを作ってほしい」
「ちょっとしたお礼のプレゼント用」
レザークラフトをしていれば、そんな嬉しい依頼(セミオーダー)をいただくことがあります。しかし、ここには大きな落とし穴がありました。
まだまだ初心者に毛が生えた程度の私にとって、「1万円」という数字は正直嬉しかったです。レザークラフトを副業として意識し出してから、初めての大台。
しかし、先日納品した小型財布の制作において、私は「制作時間が想定の2倍以上かかる」という手痛い失敗を犯しました。
制作時間だけでなく、準備時間——つまり材料調達や型紙の再設計の時間——も思った以上でした。今回は、その失敗の全貌を公開します。これから副業としてレザクラで収益化を目指す方が、私と同じ轍を踏まないための教訓です。
成功作と失敗作の境界線:1枚の画像が語る真実

まずはこちらの画像をご覧ください。今回の格闘の記録です。
中央上: やっとの思いで納品した「セミオーダー完成品」
右上: 元となった「3ヶ月使用の試作品」。これを元に商品化を考慮したアップデートを目指しました
左上・下段: 今回の制作過程で生まれた「失敗作」と「内装パーツの残骸」
なぜ、一度完成しているはずの財布がありながら、これほどの屍(しかばね)を築くことになったのか。その理由は、「材料調達のトラブル」「今後の商品展開を意識」「型紙の微調整の連鎖」にありました。
セミオーダーで制作時間が異常に長くなった3つの原因
実際にオーダーされてから納品まで、3週間ほどかかりました。特に後半の10日間くらいはずっと頭を悩ませていました。気持ちが落ち着いたところで、原因を整理します。
材料調達のトラブル
試作品と同じ仕様でも、使う革の種類や厚みがわずかに変わるだけで、雰囲気や使い勝手が激変します。今回「大人の緑」という曖昧な色指定があり、普段使っている革と違うものを調達しました。
ところが、コバ処理(革の切り口の仕上げ)がどうしてもうまくいきません。処理剤を複数購入して試しましたが、納得いくものにならず苦戦。左上の画像の失敗作は、このコバ処理の試行錯誤の結果です。結局、また別の革を購入し直すことになりました。
1mmの微調整がすべてを破壊する
「もう少しだけ薄く」「あと1mmだけ幅を」という微調整を型紙に加えた結果、全体の整合性が崩れました。修正のたびに内装パーツを作り直すことになり、時間は容赦なく溶けていきました。
この時、あまりの苦労に手書きの型紙を諦め、導入してみたのが「レザクラCAD」です。これが型紙制作の作業時間を大幅に短縮してくれました。
▶︎ レザクラCADで型紙作成を効率化|初心者でも1mmのズレをなくす方法
飲食店オーナーとしての「時間単価」の欠如
本業の合間に作業しているくせに、「納得いくまで作り直す」という職人気質が牙を剥きました。気づけば、販売価格から材料費を引いた利益を時給で割ると、「コンビニバイト以下の単価」になっていたのです。
失敗作や無駄になった処理剤などのコストを含めて再計算すると……これ以上考えるのはやめておきます(笑)
失敗から学んだ「標準化」と「投資」の思考
今回の赤字寸前の経験から、私は2つの重要な決断をしました。
「職人化」しないための標準化
「技術的に未熟だからこそ、完成度を極限まで求めなければ」という思考が、そもそも間違いでした。実際に失敗作も含めて経緯を説明し納品したところ、そのプロセスも含めて評価をいただけました。プロとして、ある一定の完成度を安定して出すための「標準化」が不可欠です。
▶︎レザークラフト副業で月5万稼げるか?30個販売シミュレーション
デジタル設計(CAD)による再現性の確保
感覚に頼った型紙修正が、今回の残骸を生みました。修正しても他のパーツとの整合性が一瞬でわかる「デジタル設計」の重要性を痛感しています。
▶︎ シューホーンの型紙をデジタル化|レザクラCADで再現性を手に入れる
30個検証シリーズへの決意:数字で証明する
今回の失敗は、現在進行中の「30個制作販売検証シリーズ」に向けての大きな授業料となりました。その分、経験値が貯まったと前向きに考えています。
「30個売れるか」という不安もありますが、それ以上に「30個を同じクオリティで、いかに効率よく作れるか」という数字(時間・原価)を蓄積することが、今後の収益化には不可欠です。
▶︎ 【検証】レザークラフト副業で月5万稼げるか?30個販売シミュレーション
まとめ:失敗を「データ」に変えて次へ
今回の小型財布制作は、正直に言って「効率」という面では0点でした。
しかし、左上にある失敗作の山は、次の一手を打つための貴重なデータです。
メルカリ出品や撮影への不安は尽きませんが、まずは「30個作る」という行動を通じて、この不安を一つずつ消し込んでいきます。
皆さんも、もし制作で行き詰まったら、その「残骸」を捨てずに眺めてみてください。そこには、次の成功へのヒントが必ず隠されています。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。